*冷灰/ユニコーン

冷灰のうえを歩くユニコーンがふりかえる。

その目にわたしはうつらない。
わたしにも、ユニコーンにまたがる少女は、見えていない。

こわいというきもちだけが真実ならば、もう宇宙は解き明かされてしまったということになる。

/

だれかが気がつく、太陽はひとつじゃない、ものがたりとキスを交わす。
だれかが落ちた、このものがたりにおいて動物に危害は加えられます、虚構の塔がうつくしく息を吐く。

大声で叫ぶだとか、
失神するほど泣くだとか、
うで、ちぎれるほど、結びあうだとか、
そういうことがなくても、
あっても、
時間は非実存だ。
わたしだけがあつかえる、まさに、わたし自身とおなじ。領域は内側にある。
外側はない。
腸結世界にあとすこしで、夜がおりる。まだすこしで、月は破裂する。いますこしで、ひとがひとを抱き込む。

ふうりんのことを考えていた。
もののことはあまり考えてないほうだから、もののうちでは、ふうりんのことばかり考えていたと言っていい。

いいなと思う。
音がいい。
透明さもいい。
小さいことも、なかなかいい。
あれをさげて歩いたら、わたしも夏風案内人。
それはしないが、窓辺にさげたら、どうだろう。
チリンチリンとときどき鳴るか、もしくは、ただひかるか。
風もひかりもない日や夜は、ふうりんはどうしているのだろう。

ものには、時間がない。
明日がくることも、空が晴れることも、ふうりんはしらない。

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