*見える

空が青い、すさまじく。

夏物の服を見つめながら、信じられない気持がしてくる。
ほんとうに夏がくるのだ。もうすこしで、すこしのあいだ。
わたしはまだ冬の服を着ている。
夏がきたら、そのときは、夏の服を着るのだろうか。

雨が降りはじめた。
日和のものではなさそうだ。

電線を、あめのしずくがひた走る。
あとからあとから、つぎのしずくがつづく。
グラウンドにはカラスが降り立つ。
溜まりを見つけては、歓びに、のたうちまわるように、水浴びをする。
すずめも、すこし離れた場所で、なにかをついばんでいる。
わたしにはわからないが、雨のグラウンドには、かれらの好きなものが、地中より浸み出してくるらしい。

わたしは雨音を気にいる。
透明な無数の指がけんばんを弾くように、水面へ、波紋はうまれつづけた。
わたしは聞こえない音も気にいった。
いつまでも、そこにいたいとおもった。

アメリカのいちばんあかるいところは、地下鉄の階段下から見あげる出口。

蛙は蛙を呼んでいるように見える。

わたしたちは、こなごなのうち、ごなのほうに含まれる希望を、ものもいわずに集めている。

6/20

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