**言語(まほう)
まほうって、あのひとは言ったのだったか
わたしの目にも、いま、まほうがかかっていて
世界がとても優しく
美しく
尊く
泣きたいほど愛しくおもえる
わたしは、「みんなとおなじ」、
わたしは足りなくなんかなかった
手があって
足があって
よくあることばだと思っても聞いて
声があって
どこもいま痛くなくて
真実だとわたしが思えたことが大切だから
わたしのぶんのロッカーがあって
わたしが歩く場所がある
あたまのなかには場所がなかったんだ
空間がなくて
ことばもなくて
だからわたしは安らげたのだけれど
この
雑多な世界もすてきです
わたしはじゅうぶんに生きている
価値があり
意義がある
なによりも
まほうにまもられている
*
わたしがなくなる、とふるえたのだった
なくなったのかどうかはもうわからない
ただ
いまのわたしがここにいる
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