*星が燃えている

星が燃えているのを、ひと月ほど前だったか、見た。

わたしの好きな夜の散歩(ほかは、珈琲と伊藤計劃としている)のとちゅう、東の夜空に、炎のかたまりが流れていた。
赤い尾はきみょうに直線なのに対し、落下する星は輪郭に炎を波打たせる。
大きかった。落ちたら、この星が死んでしまうくらいに。
まぶしかった。その夜空の一画を解き明かしてしまうくらいに、まぶしかった。

いっしゅんのことだった。
気がつくと、わたしは街路に視線をもどしており、いま見たもののことも、なぜ自分がその瞬間だけ夜空を見上げていたのかもわからなかった
数歩歩いてから、はっとして、顔をあげた。
ひかりは、もうどこにもなかった。


あれは、わたしのげんじつだった、といまになって思う。
なにを見たにしても、見ていないにしても、わたしが知ったものすべてを、それだけをゆいいつの、げんじつとよべるのだ。

きれいだった。
鮮烈なだいだい色は、記憶のよわいわたしのなかで、まだ燃えている。

星は死につづけている。

生きているひとがえらい。
ほかに代えのない価値観を、わたしは信じつづけたい。

明日から、また歩きだす。

6/14

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