*ばん
わたしはことばに魅かれているとおもっていた。
ことばを求めている気になっていた。
ばん。
そんなふうに、突然気がつくことはありえないことではない。
わたしはことばではなく、いのちが恋しかったのだ。
ことばの奥にあるいのちに反応して、魅かれ、求め、あつめては、
どんなに美しい文章であっても、すばらしい人生であっても、
生活はメロディに似ている。あなたが奏でる音は、
鋭すぎる。
鍵盤だけがぽつんとある部屋を、とおん、とおん、ノックをする。
返事がないことに、わたしはさらにあんしんして、どこにもない、
ないことだけが、あんしんになる。
ことばを追いかけて、ものがたりをもとめて、
わたしのなかの原子が、あなたの原子をとらえ、知る。
わけは、知る由もない。
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