***鳥の匂いがする

がたがた、ひざが震える日は、いっぽいっぽ、地、ふみしめる。

いち、に、さん、数えられない日は、なにも数えない。
しらないあいだにおどずれる、つぎのいっしゅん、いっしゅん、を過ごす。


できることはかぎられている。
わたしは万能じゃない。
よくもない。
けれど、わるいって仕分は、だいきらいだ。


わたし以外のものが、わたしに教えること。
わたしが、わたしに教えること。

ひとつひとつを、あつめて、
数えなくていい、あつめて、
いっぽいっぽ、
こぼしながらでもいい、あるいて、

遠くへ向かわなくていい。

その美しい風景は、知らないままでいい。
あたらしいことはいらない。
いらないって言っても、あるだろう。
だが、いらないよ。

さあ、

それだけをねがって、

さあ、

おうちへ、かえろう。

灯りを細くして、午前零時をむかえる。
部屋は、あったかい色に包まれる。
肉体の枠組が、繊細に、わたしを形造る。
それを、灯りは、ぼやぼや、溶かていく。

猛禽類のペットはいない。
いたら、わたしはねずみを捌かなきゃならない。
いないから、捌かなくていい。


aは手に入らなかったが、bは叶った。
bの犠牲は無駄になったが、cにおいては間違いがなかった。
言い訳みたいに、ふたつの条件とふたつの結果を、つぎあわせて、よかった、わるかった、結論する。

ことばは、繰り返すが、ことばはわたしたちではない。
わたしたちはけっしてことばではない。

人生を包括することばはどこにもない。

それは希望だと言えないだろうか。

鳥の匂いがする。

わたしは、森の巣に眠るとりを、いちども見たことがない。

もしかすると、鳥にはもうひとつの世界があるのかもしれない。
わたしたちが、ぼやぼや溶ける夜をすごすあいだ、白や黄色のひかりがあふれるその世界で、鳥たちは過ごしているのかもしれない。
もうひとつの世界には、空がなく、見渡すかぎりの花野だけがある。
わたしたちの夜、鳥たちは花野へあつまり、囀る。
飛ぶことはしない。
もうひとつの世界では、鳥には翼はないのだ。

だから、鳥は夜をしらない。


わたしたちは遅れている。なにかから、ずっと、遅れている。

この夢がさめたら、あの花野にはにどと行けない。

それを希望と言うには、わたしは弱すぎる。

たっぷり、たっぷり、眠ろう。

6/24

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