**雨と奥底

ことばが先行している感覚がある。
やはり、過剰なのだ。
わたしはなすすべもなく、ことばらしいものになっていく。

あたらしいわたしが軋んでいる。
二重三重の改稿が、なんらかを阻み、同時に、生み出していく。

傍観者でいられることを手放してはならない、と、水の中でつぶやく。
わたしの奥底にだけ聴こえればよい。
奥底に辿り着くためには、反響をあきらめることだ。

梅を漬けた。35度のホワイトリカーは、いっぽんまるごと瓶に注いだ。
梅酒づくりにたずさわったのは、初めてで、梅は、桃によく似た肌触りで、匂いもほどよく甘かった。
おへそをぷつぷつ弾き飛ばして、凝縮にそなえて表面に穴を数個あける。
氷砂糖をみると、なぜか、わくわくした。

この世でいちばん甘いくうかんを閉じこめる。
よいぐあいになるには、どれほどの時間がかかるのか、わたしは知らない。

そこがぬけそうな雨がはじまった。
わたしは雨が好きだ。

雨は、雨のことを知っているだろうか。雨であることは知っているだろうか。

6/30

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