視線 ひとがどんなにたくさんいても、わたしを見ていない ひとがどんなにたくさんいても、わたしだけを見ている たとえようのない視線が見たものは、 わたしのなにだったのだろう。 傷つくことは裏切りに思える。 しかしそのまえに、わたしはいちばんたいせつな、 ゆいいつの存在を裏切ったのではないか、とも思う。 * まだ子どもだったころ、公園のベンチに腰掛けたことがある。 わたしは空が見たかった。 空気を吸いたかった。 いまのわたしは、あのときのわたしなのかもしれない。 きんじられた幼いわたしが、いま、空を見て、 空気をめいいっぱい吸っている。 顔をあげられない愛しいひとに、わたしは手をふる となりのベンチに座るひとのために、わたしは泣けない ひとがいのちであることを思いだそう。 あす、わたしに刺さる視線を、きちんと、いのちなんだ、 と受け入れよう。 あれは感情ではない、無感情でもない、いのちなのだ。 * ゆうきがほしいのだろう そのきぶんは、あんがい温順しく、長毛の仔猫みたいに、 ふわりふわりと先端をひからせる * しすがにしなさい
コメント
コメントを投稿