ツミルニルマ1

1
起き上っているか、横になっているか、その中間。人生は三つのうちのどれかひとつだ。
中間のとき、キスをしようよ。
ツミルニルマ、今夜も月によろしく。



 
 
2
大嫌いなものをやがて大好きになる、わたしのへんてこりんな特技に、早く気がつけたこと、よかったな、って思う。
早いってどういう意味なのかは分からない。
分からないことに出会えたこと、よかったな、って思う。
へんかな。
ツミルニルマ、きみのこと大嫌いになるつもりだからよろしく。



 
 
3
森のなかには森があるの?
じゃあ木のなかには木が?わたしのなかにはわたしが?
あるなかにあるなかには、なにがあるの?
いつ、なくなるのかな?
それとも、「ない」って、ないのかな。
だって、きみはあるよ。わたしもあるよ。
きみがなくて、わたしがないことなんて、いままでいちどもなかったじゃない。
ツミルニルマ、あしたのあさはお味噌汁をおねがいね、よろしく。



 
 
4
かげぼしのなかまになって風を待つよ。
星がやわらかくなって、透明になって、わたしたちが願ったら、風になるのかもしれない。
わたしにも、そんな正体があるかな、きみにも。
ツミルニルマ、願いをよろしく。



 
 
5
とびきり美味しいと、飛んじゃって帰ってこられない。
ちゅうくらいでいいよ。
なんなら不味いほうでもね。
ツミルニルマ、きみの火によろしく。



 
 
6
碇を下すとき技術が要るって知らなかったんだ。
きみの島はまだずいぶん遠い。
でも見えてるよ。
きみの作ったちいさなお城ときみに、いま、朝陽が射す。
ツミルニルマ、眩むといけないから、影のこちらは見ないように、よろしく。



 
 
7
窓だと思ったらあけて
夜だと思ったらけして
雨だと思ったらさす
きみだと思ったらすっとんでってBuon giorno!あいさつをするつもりだよ。
ツミルニルマ、そのときまで、わたしだと思ってあなたをよろしく。
 



 
8
音がなにかを伝わって伝わる、音になる。
だれにも伝わるまえの音に名前をつけたい。
ツミルニルマ、この罪へ罰をよろしく。



 
 
往路
 
あなたの幸せはいらない
わたしの幸せもいらない
あなたの苦しみがほしい
わたしに苦しみがほしい
いまのところ
この世界の構成にはまんぞくしている
ほんとうのところ
いま以上のまんどくはないと思うくらいまんぞくしている

 

 

 

 


 
それでもわたしは往路をいく
あなたに応えたい人生でありたい

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